✔野菜を作りたいけど、どの肥料をどのくらいまいたらいいの?
✔肥料をまきすぎないように、どうやて量を計算したらいいの?
✔そもそも、肥料のまく基準はどこから探せばいいの?
<プロフィール>
トマト農家になって約10年 トマト以外にも色々な野菜を栽培中
認定農業者 調理師
2015年 飛騨統一圃場審査にて岐阜県園芸特産振興会長賞受賞(最優秀賞)
2023年 野菜加工事業を開始(野菜加工 とまきち)
ネットショップBASEにて野菜の販売開始 八百屋 とまきち (ytomakichi.base.shop)
当サイトでは農業で躓いたこと、野菜の育て方や、保存の仕方、調理法などの悩みをどう解決してきたかを書いています。
肥料の施肥設計ってどうやってやるの?
野菜の三大栄養素、窒素、リン酸、カリウムの役割について前回学んだけど、元肥をどれだけ畑に入れたらいいかは、まだ分からないんだよね。
これまでに、土作りで堆肥や石灰資材、前回で窒素、リン酸、カリウムについて紹介してきたから、どんな野菜を育てたいかを決めたら、元肥や追肥の量を考えないといけないんだけど、確かにどれくらい施したらいいかは分からないよね。
そうなんだ。
どうやって元肥の量を考えたらいいんだろう?
今回は基肥をどれだけ施したらいいかを、どうやって計算したらいいか紹介するね。
よろしくお願いします。
野菜作りの為の三大栄養素、窒素、リン酸、カリウムについての記事は、下のボタンから見ることが出来ます。
※大判 図解家庭園芸
用土と肥料の選び方・使い方、著者 加藤 哲郎、発行所 社団法人 農山漁村文化協会を参考にしています。
施肥設計を実際にしてみよう!
自分の地域に合った施肥設計を確認して見よう
土作りがしっかりと出来ていれば、野菜に関する本やネットの情報を元に元肥を入れても野菜は作ることが出来るよ。
だけど、農林水産省のホームページから自分の住んでいる地域や作型からも基本的な施肥の量が示されているから、参考にするのもいいと思うよ。
農林水産省から、そんな情報も取得出来るんだね。
じゃあ、野菜はトマトを作るとして、僕たちが住んでいる岐阜県飛騨高山、作型は夏から秋にかけての雨よけ栽培を元にして見て見よう。
野菜作りに関しては沢山情報が出ているので、本や野菜に関するホームページを参考に施肥設計をしても、野菜を作ることが出来ます。
ですが、農林水産省のホームページでは地域ごとに基本的な作物の施肥設計が作られているので、参考にして見ましょう。
上記のアドレスの農林水産省のホームページから「都道府県施肥基準等」というメニューがあるので、そこから自分の畑のある地域を選びます。
今回は東海、岐阜県の野菜編を選択しました。
育てる野菜を選ぼう
野菜編の中から、自分の育てたい野菜を選択します。
今回はトマトを選択。
作型を選ぼう
次に、作型を探します。
飛騨高山は雨よけハウス栽培が基本なので、「雨よけ栽培」の施肥を基準にしました。
対象地域に飛騨と書かれていますね。
施肥基準を参考に施肥量を計算しよう
窒素肥料の施肥計算をしてみよう
目的の野菜の施肥基準量を見つけることができたね。
この施肥基準量を元に計算して、使う肥料の量や追肥についても考えることが出来るよ。
難しそうだね(^▽^;)
まずは、一度実際に計算して見よう。
手始めは窒素の基肥の計算だよ。
基準となる施肥量を見つけることが出来たら、値をもとに実際に必要となる肥料の量を計算して見ましょう。
まずは施肥成分の窒素から計算してみましょう。
窒素は化学肥料由来の物と、有機物肥料由来の物と2種類を使う設計となっていますね。
まず化学肥料由来の窒素の必要量は10a当たり(田んぼ1枚分、長さ40m、幅7.2mハウスだと2棟、幅5.4mハウスだと3ハウス分)の総量で17.2㎏、基肥で2.8㎏。
今回は単肥で計算してみましょう。
窒素肥料として、基肥として使いやすい硫安を使うことにします。
(硫安などの単肥の特徴は後日説明する予定です)
硫安の窒素成分量は21%。
必要な窒素の成分量2.8㎏を硫安の窒素成分量で割ります。
2.8÷0.21=13.3
ということで、基肥の窒素量2.8㎏を10aの面積に施す場合は硫安で13.3㎏必要となります。
次に、有機物肥料由来の窒素成分6㎏を計算します。
窒素成分由来の有機物肥料として、油カスを使うことにしました。
油かすの窒素成分量は6%。
なので、6÷0.06=100
油かす100㎏を10a当たりの畑に入れることで、窒素成分量6㎏を有機物肥料として施すことができます。
次に追肥分の計算です。
窒素は一度に沢山施しても、潅水や雨で流出したり、作物の成長のバランスが崩れたりするなど、障害が出る可能性があります。
また、トマトのように長い間収穫が続く野菜では、土壌が一度に保持できる肥料の量が決まっており、基肥だけでは補いきれません。
そこで、期間を3回ほどに区切り、肥料を追加して与えます。
これが追肥です。
トマトの場合は3段目の花、5段目の花、9段目の花が咲く頃を基準に追肥をしましょう。
3段目の花で窒素成分量で1.8㎏、5段目は12㎏、9段目は0.6㎏を目安に与えます。
基肥に使った硫安は追肥にも使えるので、このまま硫安を与えることを前提に計算しましょう。
3段目の時に1.8÷0.21=8.6
5段目の時に12÷0.21=57.1
9段目の時に0.6÷0.21=2.9
3段目開花時に8.6㎏、5段目開花時に57.1㎏、9段目開花時に2.9㎏となります。
1a当たり1回1㎏を限度として考えるので、10a当たり10㎏まで。
5段目開花を目途に2回目の追肥をする場合は1週間ほどの間隔を空けながら6回に分け、硫安を与えて下さい。
リン酸肥料の施肥計算をしてみよう
そういえばリン酸は基肥で全量施肥するんだったよね。
よく覚えているね。
リン酸は土壌で流失しにくいから、基肥で全量施肥するのが基本。
だけど、トマトは長い間、果実を収穫する野菜だから、花を作る段階の時を見計らって、追肥でも与えるようにするんだ。
でも、前述したように、土壌で流出しにくいから窒素やカリウムより基肥で与える量は多めになっているね。
リン酸は全量を基肥で施すことが基本です。
しかし、トマトなどの果実を長く収穫する作物の場合は追肥でも与えることがあります。
リン酸の総施肥量は10a当たり29.7㎏です。
まずは基肥の計算をしましょう。
リン酸の成分量は基肥で18.9㎏。
前述した油かすにはリン酸が1%含まれているので、100÷0.01=1。
ということで、リン酸の基肥の分から成分量を1㎏引いておきます。
リン酸肥料として過リン酸石灰を使うことにします。
過リン酸石灰のリン酸量は20%。
計算すると17.9÷0.20=89.5。
なので、89.5㎏の過リン酸石灰が必要となります。
過リン酸石灰は追肥にも使えるので、追肥も過リン酸石灰で計算しましょう。
リン酸成分量で、3段目の時に2.4㎏、5段目の時に6㎏、9段目の時に2.4㎏追肥します。
計算すると、3段目の時に2.4÷0.20=12
5段目の時に6÷0.20=30
9段目の時に2.4÷0.20=12。
なので、12㎏、30㎏、12㎏と開花を目安に施します。
カリ肥料の施肥計算をしてみよう
次はカリウムの計算だね。
カリウムも施肥基準量を目安に計算するよ。
カリウムは硫酸カリ(カリ成分50%)を肥料として使うから、この数字と施肥基準量を使って次はじなんが計算して見てよう。
が、頑張るぞ(;゚Д゚)
カリウムも窒素と同じように、一度に施すことが出来ないので、施せない分は追肥で補うことにします。
では、カリウムの基肥の計算をしましょう。
カリウムの総量は23.2㎏、基肥の基準成分量は8.8㎏。
油かすにカリウムが1%入っているので、施した量が100㎏なので、1㎏のカリウムが入っていることになるので、成分量を1㎏引いておきます。
肥料は硫酸カリ(カリ分50%)を使います。
硫酸カリの必要量は7.8÷0.50=15.6。
基肥には硫酸カリを15.6㎏必要となりますね。
追肥は3段目開花の時にカリ分が2.4㎏、5段開花の時に9.6㎏、9段目開花の時に2.4㎏必要となるので、
計算すると、3段目の時に2.4÷0.50=4.8
5段目の時に9.6÷0.50=19.2
9段目の時に2.4÷0.50=4.8。
開花目安に合わせて4.8㎏、19.2㎏、4.8㎏追肥します。
肥料の施肥設計を都道府県施肥基準を活用して計画してみた結果
都道府県施肥基準を使って岐阜県飛騨地方、トマトの雨よけ栽培で使う肥料の量を計算することが出来たね。
都道府県で決めている、窒素、リン酸、加里の基準から使う肥料の量が出せるんだね。
これで、色んな野菜を育てる時の目安を考えることが出来るね。
それでは、今まで計算して見た施肥設計をまとめて見ましょう。
㎏/10a | 硫安 | 油カス | 過石 | 硫加 |
基肥 | 13.3 | 100 | 89.5 | 15.6 |
追肥1 3段開花 | 8.1 | 12 | 4.8 | |
追肥2 5段開花 | 57.6(6回以上に分ける) | 30 | 19.2 | |
追肥3 9段開花 | 2.9 | 12 | 4.8 |
今回のまとめ
肥料の施肥設計ってどうやってやるの?
⇒基肥や追肥の量を計算できるようになりたい。
施肥設計を実際にしてみよう!
自分の地域に合った施肥設計を確認して見よう
⇒農林水産省の都道府県施肥基準等で自分の畑のある地域の施肥基準を確認できる。
都道府県施肥基準等:農林水産省 (maff.go.jp)
育てる野菜を選ぼう
⇒今回はトマトを選択。
作型を選ぼう
⇒飛騨地方の雨よけ栽培を選択。
- 施肥基準表を基に肥料の計算をする。
- 今回は複合肥料ではなく単肥で考える。
- 窒素は化学肥料と有機肥料を使う。
- 化学肥料による基肥の窒素必要量は28㎏。
- 有機肥料による基肥の窒素必要量は6㎏。
- 追肥は3段目の花で窒素成分量で1.8㎏、5段目は12㎏、9段目は0.6㎏必要。
- 化学肥料は硫安(窒素成分量21%)、有機肥料は油カス(窒素成分量6%)を使用。
- 追肥も硫安を使用し、1回の施肥量を10a当たり10㎏を超えないよう、複数回に分けて施す。
- リン酸肥料による基肥のリン酸必要量は10a当たり、18.9㎏。
- リン酸肥料には過リン酸石灰を使用。
- 過リン酸石灰のリン酸成分量は20%。
- 油カスのリン酸成分量は1%。
- トマトに関してはリン酸も追肥を行う。
- 追肥はリン酸成分量で、3段目の時に2.4㎏、5段目の時に6㎏、9段目の時に2.4㎏必要。
- カリ肥料による基肥のカリウム必要量は10a当たり8.8㎏。
- カリ肥料には硫酸カリを使用。
- 硫酸カリのカリ成分量は50%。
- 油カスのカリ成分量は1%。
- 追肥はカリ成分量で、3段目開花の時に2.4㎏、5段開花の時に9.6㎏、9段目開花の時に2.4㎏必要。
㎏/10a | 硫安 | 油カス | 過石 | 硫加 |
基肥 | 13.3 | 100 | 89.5 | 15.6 |
追肥1 3段開花 | 8.1 | 12 | 4.8 | |
追肥2 5段開花 | 57.6(6回以上に分ける) | 30 | 19.2 | |
追肥3 9段開花 | 2.9 | 12 | 4.8 |
今回は農林水産省の都道府県施肥基準を元に施肥設計をして見たよ。
注意点として、あくまでも基準だから、自分の畑の土壌診断の状況を見て判断したり、不安な場合は各地域の普及員さんに相談して見ようね。
どれくらいの量の肥料が必要か事前に確認することが出来るねのはとても大事なことだね。
そうだね。
今回は化学肥料の単肥で考えたけど、窒素、リン酸、カリが一緒に入っている複合肥料もあるから、それを利用すると便利だね。
そうか、複合肥料の方が一緒に入っているから便利だよね。
また、機会があったら複合肥料を使った場合の施肥設計も紹介するね。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
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著者 加藤 哲郎
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