美味しい野菜を作るために！知っておきたい堆肥の役割

野菜に栄養を与えるのが目的なら、肥料だけでも良い気がしますよね。

土を使わない水耕栽培では水溶液だけで野菜を育てています。

ですが、水耕栽培とはいえ、肥料を水に溶かして流しているだけでは植物は育ちません。

液肥の濃度を常に調整し、水の中に酸素を供給する必要があるのです。

畑ではこの肥料と酸素の調節を土がしてくれています。
この時に土の状態が団粒構造を形成していることで空気の層を作り、肥料を保持しやすくなり、植物に適切な生育環境を作り出すのです。

この土の団粒構造を作る為に堆肥が必要となります。

堆肥には大きく分けて、「ふかふかな堆肥」と「栄養の多い堆肥」に分けることが出来ます。

ふかふかな堆肥は落ち葉や藁、籾殻、バークなど繊維質が多い植物を使った堆肥で、土壌改良効果が大きく、栄養を供給する効果は小さいのが特徴です。

土壌改良効果が大きいので、土壌の団粒化を進めたい時や、花などの窒素分をあまり必要としない植物に向いています。

栄養が多い堆肥は家畜の糞や油粕、食品の残りから作られます。
この栄養の多い堆肥は土壌改良効果が少ない変わりに、栄養を供給する効果が大きいのが特徴です。

成長が早く、窒素分を多く必要とする野菜に適しています。

なので、秋など野菜を収穫し終わり、来年に向けて土作りをする場合は「ふかふか堆肥」を、春など野菜作りをする前に肥料の役割として使いたい場合は「栄養堆肥」を施します。

「ふかふかな堆肥」には「落ち葉堆肥」、「藁堆肥」、「腐葉土」と、繊維質が多い「籾殻堆肥」、「バーク堆肥」があります。

「落ち葉堆肥」、「藁堆肥」、「腐葉土」は、落ち葉や藁を原料として使い、野菜から花類の育成まで幅広く使うことができ、窒素分は多くないですが、土をふかふかにする効果はとても高いです。

「籾殻堆肥」や木のチップを混ぜて作る「バーク堆肥」は繊維質が多く、分解に時間がかかり、未熟な物を畑に入れてしまうと畑の窒素が籾殻や木のチップの分解に使われてしまい、この時に作物を植えてしまうと窒素が使えず、上手く育たなくなるので、注意が必要です。
また、籾殻やバークは牛糞堆肥を作る時の水分調整に使われるので、ほぼ牛糞堆肥として使うことが多いと思いますが、未熟な堆肥が多いので、完熟の堆肥になるまで保管するか、早めに施し、作物を植えるまでの時間を多くとるようにします。

「栄養の多い堆肥」は「牛糞堆肥」、「鶏糞堆肥」、「豚糞堆肥」があります。

牛糞堆肥は牛の糞を原料として作られ、バークや籾殻、オガクズなどを入れて作らることが多いです。
栄養堆肥の中では栄養分は少な目で、土壌改良効果の方が高い特徴があります。

鶏糞堆肥は牛糞堆肥とは反対で、栄養がとても多く、土壌改良としての効果は小さく、肥料としての用途が高いです。
どれくらい栄養が多いかと言うと、化学肥料と同じくらい！
やり過ぎは禁物です！！

豚糞堆肥は牛糞堆肥と鶏糞堆肥の間くらいの効果です。
土壌改良にも、肥料分目的でもOKです。

近くに乗馬クラブや競馬場がある場合は馬糞で作った堆肥もあったりしますね。

ちなみに先ほど見てもらったトマトの樹を堆肥にしたものは窒素分も繊維質も多く、「ふかふか堆肥」と「栄養堆肥」の間くらいの特性があります。

堆肥が原因で作物が上手く育たないという失敗例の一番の要因は未熟堆肥を施すことで起きます。

未熟な堆肥を畑に施すと有機物を菌が分解することで、アンモニアや亜硝酸などの有害ガスや有機酸が多く発生しやすく、根や葉が傷み、栽培が上手くいきません。
また、未熟な堆肥を分解する時に微生物は土中の窒素を栄養源として利用する為、窒素不足になったり、未熟堆肥の臭いに害虫が集まり、根を食害されたりする被害も出ます。

未熟堆肥を施すと作物を生育不良にする障害を起こすことになりますが、施す前に未熟な堆肥かどうかを確認することができます。

1.葉っぱや木の枝など、原型が残っているもの。

2.悪臭のするもの。

3.握ると水分が出るもの。

4.オガクズなど分解されにくい繊維質の物が沢山入っている堆肥などに注意する。

上記の4つは見たり、匂いを嗅いだりすることで確認することが出来ます。

特に4つ目のオガクズ堆肥は完熟堆肥として販売してある場合があるので、注意してください。

もし、完熟堆肥か不安な場合は作付けの1ヶ月前に施しましょう。
この時は深く耕さず、浅めに耕し分解を促進させ、充分に分解させてから作付けします。