鶏肉を常温で解凍してしまったら?調理師の答えは「2時間まで」です

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こんにちは。
大阪で一人暮らしをしている、調理師でFPのとまきちです٩( ᐛ )و

朝、冷凍庫から鶏肉を出して、冷蔵庫に移すのを忘れたまま出かけてしまった。
夕方に帰ってきたら、キッチンの上でパックごと解けていた。
「これ、焼けば食べられるのかな」と迷って、この記事にたどり着いた方も多いと思います。

先に答えを書きます。
判断の分かれ目は「常温に置いた時間」です。
目安は2時間、暑い日は1時間。
それを超えていたら、もったいなくても捨ててください。

このあと、なぜ2時間なのか、なぜ焼いても安全とは言い切れないのかを、調理師として順番に説明します。

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目次

結論 常温に置いたのが2時間以内なら加熱して食べる、超えたら捨てる

鶏肉の常温解凍は置いた時間で決まる。2時間以内、室温32℃以上の日は1時間以内、2時間を超えたら捨てる
常温に置いた時間どうするか
2時間以内すぐに加熱して、その日のうちに食べます。中心部を75℃で1分以上。生のまま冷凍室に戻すのはやめてください
室温32℃以上の日線が1時間に縮みます。夏に窓を閉め切った部屋や、コンロの近くに置いていた場合はこちらで考えます
2時間を超えた捨てます。においや見た目に変化がなくても、です
朝から夕方まで出しっぱなし迷わず捨ててください

この「2時間・1時間」は、米国農務省(USDA)が示している目安です。
USDAは、傷みやすい食品を冷蔵せずに置くのは2時間まで、気温が32℃(90°F)を超えるときは1時間まで、としています。

日本の農林水産省も、解凍は常温ではなく、電子レンジや流水などで素早く行うように呼びかけています。
解凍に時間がかかるほど、食中毒の原因になる菌が増える可能性があるからです。

なお、この2時間には、スーパーから持ち帰るまでの時間や、台所に出しておいた時間も含まれます。
「解凍のつもりで置いた時間」だけで数えないようにしてください。

中がまだ凍っていても、安心はできません

常温解凍で迷う方がいちばん多く言うのが、「でも、中はまだカチカチだった」です。
気持ちはよく分かります。
ただ、これは判断の材料になりません。

解凍は外側から進みます

冷凍の肉は、外側から順番に解けていきます。
中心がまだ凍っていても、表面はとっくに解けて、部屋の温度に近づいています。
USDAも、常温解凍では中心が凍っていても外側は菌が増えやすい温度帯に入る、と注意しています。

冷蔵庫で6時間解凍した鶏むね肉。外側は解けて芯が残っている
冷蔵庫で6時間置いた鶏むね肉。外側は解けても、芯はまだ凍っていました。常温でも、同じように外側から解けていきます

そして、菌がいるのは主に肉の表面です。
つまり、いちばん菌が多い場所が、いちばん先に温まるのが常温解凍です。

条件がそろうと、菌は20分ほどで倍に増えます

常温に置くと菌は20分ごとに倍になる。1時間で8倍、2時間で64倍

USDAによると、菌は4℃〜60℃のあいだで増えやすく、条件がそろうと最短20分ほどで数が倍になります。
2時間は20分の6回分です。
単純に計算すると、最初の64倍になります。

もちろん、いつもこの速さで増えるわけではありません。
ただ、「2時間」という線がなぜ短めに引かれているのかは、この数字を見ると分かると思います。

「よく焼けば大丈夫」とは言い切れない理由

加熱でなくなるカンピロバクターやサルモネラと、加熱しても残る黄色ブドウ球菌の毒素

「長く置いてしまっても、しっかり火を通せば菌は死ぬのでは?」
これも、よく聞かれる質問です。
半分は正しくて、半分は違います。

鶏肉の菌の多くは、75℃1分で死にます

鶏肉の食中毒でよく知られているのは、カンピロバクターやサルモネラです。
これらは熱に弱く、中心部を75℃で1分以上加熱すれば死にます。
ここまでは「焼けば大丈夫」で合っています。

ただ、焼いても消えない毒素があります

問題は、菌そのものではなく、菌が出す毒素です。
たとえば黄色ブドウ球菌は、増えるときにエンテロトキシンという毒素をつくります。
食品安全委員会の資料では、この毒素は熱に強く、ふつうの加熱調理では毒性がなくならないとされています。

毒素がつくられるのは、およそ10〜46℃のあいだです。
常温に長く置いた肉は、ちょうどこの温度帯にいたことになります。
そうなると、あとからどれだけ焼いても、毒素は残ります。

「2時間を超えたら、焼いても捨てる」と書いたのは、このためです。
加熱は菌を減らす方法であって、置いていた時間をなかったことにする方法ではありません。

においで判断しないでください

「においをかいで、変じゃなかったら食べる」という方もいると思います。
ただ、食中毒の菌が増えても、においや見た目が変わらないことはよくあります。
においがしないことは、安全の証明になりません。

逆に、すっぱいにおいやぬめり、糸を引くような状態があれば、置いた時間に関係なく捨ててください。
見分け方は、こちらの記事で写真つきで書いています。

📗 においやぬめり、色の見分け方はこちらにまとめています。
▶ 鶏肉の再冷凍は大丈夫?調理師の答えは「半解凍まで」です

一人暮らしは、気づいてくれる人がいません

家族と暮らしていれば、誰かが「鶏肉が出しっぱなしだよ」と冷蔵庫に入れてくれることもあります。
一人暮らしだと、それがありません。
朝出して忘れたら、帰ってくるまで誰も触れないまま、というのが一人暮らしの常温解凍です。

しかも昼間は、エアコンを切って窓を閉め切って出かけることが多いと思います。
夏場に閉め切った部屋は、室温が30℃を超えることも珍しくありません。
「朝出して、夜に帰ってきた」は、どの季節でも2時間を大きく超えています。
迷わず捨ててください。

一人暮らしでよくある、3つのパターン

私のまわりでも、常温解凍の失敗はだいたいこの3つです。

  • 朝に出して、そのまま出かけた いちばん多い形です。帰宅までの時間を考えると、まず食べられません
  • 夜に出して、寝てしまった 「朝には解けているだろう」と置いて寝ると、8時間近く常温に置くことになります。これも捨てる判断です
  • 買い物から帰って、袋のまま置いた 一人だと「あとで片付ければいいか」で済ませがちです。この時間も2時間に含まれます

どれも、家族と住んでいても起こることです。
ただ、一人暮らしは気づいてくれる人がいないので、そのまま何時間も経ってしまうのが違うところです。

量が少ないほど、早く危ない温度になります

一人暮らしだと、鶏肉は1枚だけ、小分けにした100gだけ、という買い方になりがちです。
「少しだから大丈夫だろう」と思いたくなりますが、逆です。

量が少なくて薄いものほど、外の温度の影響を早く受けます。
大きなかたまりなら中心が凍ったままの時間でも、小分けの肉は全体が室温に近づいてしまいます。
一人分の少ない肉ほど、2時間の線が早く来ると思っておいてください。

相談できる人がいないから、線を先に決めておく

家族がいれば「これ、やめといたら」と言ってくれる人がいます。
一人だと、迷ったまま自分で決めるしかありません。

そのときに迷わないために、「2時間を超えたら捨てる」という線を、先に決めておくのがおすすめです。
その場で考えると、どうしても「もったいない」のほうに引っぱられます。

2時間以内だったときの扱い方

置いた時間がはっきり2時間以内なら、次の順番で扱えば食べられます。

① すぐ冷蔵庫に入れるか、すぐ加熱する

まだ使わないなら、その場で冷蔵庫へ。
そしてその日のうちに加熱してください。
「明日使えばいいか」と先延ばしにしないことが大事です。

② 生のまま冷凍室には戻さない

冷蔵庫で半解凍にした鶏肉なら、冷凍室に戻してもかまいません。
ただ、常温で解けた肉は、表面の菌がすでに増えている可能性があります。
もう一度凍らせても菌は死なないので、生のまま戻すのはやめておきましょう。

食べきれない分は、先に火を通してから冷凍します。
茹で鶏や照り焼きにしてから冷凍すれば、安心して保存できます。

📗 冷蔵庫で半解凍にした場合の再冷凍の考え方は、こちらで詳しく書いています。
▶ 鶏肉の再冷凍は大丈夫?調理師の答えは「半解凍まで」です

③ 中心まで75℃で1分以上

厚みのあるもも肉やむね肉は、外が焼けても中が生のことがあります。
切って断面が白くなっているか、透明な肉汁が出ているかを確かめてください。
ピンク色の汁が出るうちは、まだ火が通っていません。

「もったいない」と感じたら、値段で比べてみてください

捨てるのが惜しい気持ちは、私もよく分かります。
そこで、FPらしく損得で考えてみます。

鶏肉1パックは、数百円です。
一方で食中毒になると、病院代や薬代がかかります。仕事を休めば、その分の収入も減ります。
一人暮らしだと、寝込んでいるあいだに看病してくれる人もいません。

FP試験の「リスク管理」の分野では、起こる確率が低くても、起きたときの損失が大きいものは、まず避けることを考えます。
常温に置きすぎた鶏肉は、まさにこれに当てはまります。
捨てる数百円は、大きな損を避けるための保険料のようなものです。

そう考えると、少し捨てやすくなると思います。

捨てられないのは、代わりの夕食がないから

もうひとつ、捨てられない理由があります。
捨てると決めた瞬間に、その日の夕食がなくなることです。

疲れて帰ってきて、そこからもう一度買い物に出るのは正直しんどいものです。
「もったいない」に「代わりがない」が重なると、多少不安でも焼いて食べてしまいがちです。

だから私は、冷凍室に「解凍のいらない1食」を置いておくことをすすめています。
冷凍うどんでも、冷凍ごはんと卵でもかまいません。
代わりがあると分かっていれば、迷わず捨てる判断ができます。

おかずまでそろった1食がほしいときは、冷凍の宅食もひとつの方法です。
私が実際に10食頼んで試したのは、ワタミの宅食ダイレクトでした。
袋のまま電子レンジで3〜4分温めるだけで、主菜と副菜2品がそろいます。
1食の値段や冷凍室への入り方は、こちらに実測してまとめています。

ワタミの宅食ダイレクトのねぎ香るエビチリを温めたトレー
袋のまま温めるだけで、主菜と副菜2品がそろいます(ワタミの宅食ダイレクト)

次から常温解凍しないための3つの工夫

① 冷蔵庫に移すのは「朝」ではなく「前の晩」

常温解凍の失敗は、たいてい朝に起きます。
出かける前のあわただしい時間に冷凍庫から出して、冷蔵庫に入れ忘れるからです。

前の晩、寝る前に冷蔵庫へ移しておけば、翌日の夕方には解けています。
私が試したときは、冷蔵庫に6時間置いた鶏肉が、ちょうど半解凍の状態でした。

冷凍の鶏肉を袋に入れて冷蔵庫で解凍している
冷蔵庫で解凍するときは、袋が破れたときのためにもう一枚袋で包んでおくと安心です

② 忘れた日は、流水で15分

冷蔵庫に移し忘れた日は、袋に入れたままボウルに入れ、水道の水を細く流しておきます。
私の実測では、流水15分で調理できる状態まで解けました。
お湯を使うと表面だけが温まって菌が増えやすくなるので、使うのは水にしてください。

袋の口を閉じたまま流水を当てて解凍している鶏むね肉
袋を結んだまま、細い流水を当てます。15分で調理できる状態になりました
📗 冷蔵庫・氷水・流水・電子レンジの4つを実際に比べた結果はこちらです。
▶ 一人暮らしに向く鶏肉の解凍方法は? 冷蔵庫6時間・氷水30分・流水15分を調理師FPが実測しました

③ 小分けして、薄く平らに冷凍しておく

大きなかたまりのまま凍らせると、解けるまでに時間がかかります。
時間がかかるほど、常温に置きたくなります。

買ってきた日に1回分ずつ小分けして、袋の中で薄く平らにして冷凍しておくと、流水でもすぐに解けます。
USDAによると、凍ったまま加熱してもかまいません。その場合、加熱時間は通常の1.5倍ほどが目安です。
薄くしておけば、解凍せずにそのまま煮たり焼いたりもしやすくなります。

1食分ずつ小分けにして冷凍した鶏むね肉の袋
1食分ずつ小分けにして冷凍した鶏むね肉。小さく分けておけば、解けるのも早くなります
📗 小分けして平らに冷凍するやり方は、ひき肉の記事で写真つきで紹介しています。
▶ ひき肉の再冷凍は大丈夫?3つの場面に分けて調理師が答えました

まとめ 迷ったら「何時間置いたか」だけを考える

  • 常温に置いたのが2時間以内なら、すぐ加熱してその日のうちに食べる
  • 室温が32℃を超える日は、線が1時間に縮む
  • 2時間を超えたら、においや見た目に変化がなくても捨てる
  • 中がまだ凍っていても、表面は解けて菌が増えやすくなっている
  • 焼いても消えない毒素があるので、「よく焼けば大丈夫」は通用しない
  • 常温で解けた肉は、生のまま再冷凍しない

常温解凍してしまったときに見るべきなのは、においでも、中の凍り具合でもなく、置いていた時間です。
そして、捨てると決めた日のために、冷凍室に1食分の逃げ道を用意しておく。
それだけで、迷う時間も、危ない肉を食べてしまうことも減らせます。

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