✔野菜を作る為の施肥設計ってどうやってやるの?
✔複合肥料の施肥設計ってどうやってやるの?
✔複合肥料ってどうして使うの?
<プロフィール>
トマト農家になって約10年 トマト以外にも色々な野菜を栽培中
認定農業者 調理師
2015年 飛騨統一圃場審査にて岐阜県園芸特産振興会長賞受賞(最優秀賞)
2023年 野菜加工事業を開始(野菜加工 とまきち)
ネットショップBASEにて野菜の販売開始 八百屋 とまきち (ytomakichi.base.shop)
当サイトでは農業で躓いたこと、野菜の育て方や、保存の仕方、調理法などの悩みをどう解決してきたかを書いています。
2024年1月5日時点
複合肥料を使って施肥設計すると労働力が削減できる
前回は単肥を使って施肥設計をしてみたけど、園芸店に行くと窒素、リン酸、加里が一緒に入っている複合肥料が置いてあるよね。
複合肥料を使えば、単肥を使う量が少なく出来るよ。
作業効率が上げられるかもしれないね。
じゃあ、今日は複合肥料を使って施肥設計をしてみよう。
単肥の計算とどう違うのかな?
前回の単肥を使った施肥設計についての記事は、下のボタンから見ることが出来ます。
※大判 図解家庭園芸
用土と肥料の選び方・使い方、著者 加藤 哲郎、発行所 社団法人 農山漁村文化協会を参考にしています。
複合肥料を使った施肥設計を実際にしてみよう!
自分の地域に合った施肥設計を確認して見よう
施肥の基本の量は前回と同じ、農林水産省のホームページから見られる、「都道府県施肥基準」を元に計算するね。
農林水産省のホームページから地域と作りたい野菜を選ぶと情報を得られるんだったね。
その通り。
今回も、野菜はトマトを作るとして、僕たちが住んでいる岐阜県飛騨高山、作型は夏から秋にかけての雨よけ栽培を元に計算するよ。
ここからは前回紹介した、どうやって施肥基準を探すかを説明しているので、計算方法だけ知りたい方は「施肥基準を参考に複合肥料の施肥量を計算しよう」まで飛ばしてね。
野菜作りに関しては沢山情報が出ているので、本や野菜に関するホームページを参考に施肥設計をしても、野菜を作ることが出来ます。
ですが、農林水産省のホームページでは地域ごとに基本的な作物の施肥設計が作られているので、参考にして見ましょう。
上記のアドレスの農林水産省のホームページから「都道府県施肥基準等」というメニューがあるので、そこから自分の畑のある地域を選びます。
今回は東海、岐阜県の野菜編を選択しました。
育てる野菜を選ぼう
野菜編の中から、自分の育てたい野菜を選択します。
今回はトマトを選択。
作型を選ぼう
次に、作型を探します。
飛騨高山は雨よけハウス栽培が基本なので、「雨よけ栽培」の施肥を基準にしました。
対象地域に飛騨と書かれていますね。
施肥基準を参考に複合肥料の施肥量を計算しよう
窒素肥料の施肥計算をしてみよう
この施肥基準量を元に今回は複合肥料の計算をするよ。
まず、使う複合肥料を何にするか決めるんだ。
今回は一般的な複合肥料、化成肥料888にしてみよう。
使う肥料を決めたら、窒素肥料の計算をするよ。
窒素以外にもリン酸、加里が入っているけど、まずは窒素肥料から計算するんだね。
そうだよ。
じゃあ、一度計算してみよう
基準となる施肥量を見つけることが出来たら、値をもとに実際に必要となる肥料の量を計算して見ましょう。
まずは施肥成分の窒素から計算してみましょう。
窒素は化学肥料由来の物と、有機物肥料由来の物と2種類を使う設計となっていますね。
まず化学肥料由来の窒素の必要量は10a当たり(田んぼ1枚分、長さ40m、幅7.2mハウスだと2棟、幅5.4mハウスだと3ハウス分)の総量で17.2㎏、基肥で2.8㎏。
今回は複合肥料888を使い計算してみましょう。
この複合肥料の888は窒素、リン酸、加里が8%ずつ入っていることを表しています。
なので、複合肥料888の窒素成分量は8%。
必要な窒素の成分量2.8㎏を複合肥料の8%の窒素成分量で割ります。
2.8÷0.08=35
ということで、基肥の窒素量2.8㎏を10aの面積に施す場合は硫安で35㎏必要となります。
次に、有機物肥料由来の窒素成分6㎏を計算します。
窒素成分由来の有機物肥料として、油カスを使うことにしました。
油かすの窒素成分量は6%。
なので、6÷0.06=100
油かす100㎏を10a当たりの畑に入れることで、窒素成分量6㎏を有機物肥料として施すことができます。
次に追肥分の計算です。
窒素は一度に沢山施しても、潅水や雨で流出したり、作物の成長のバランスが崩れたりするなど、障害が出る可能性があります。
また、トマトのように長い間収穫が続く野菜では、土壌が一度に保持できる肥料の量が決まっており、基肥だけでは補いきれません。
そこで、期間を3回ほどに区切り、肥料を追加して与えます。
これが追肥です。
トマトの場合は3段目の花、5段目の花、9段目の花が咲く頃を基準に追肥をしましょう。
3段目の花で窒素成分量で1.8㎏、5段目は12㎏、9段目は0.6㎏を目安に与えます。
追肥の肥料は化成肥料NKマグを使います。
化成肥料NKマグは窒素16%、リン酸0%、カリウムが12%。
基肥でリン酸はほとんど入れてしまうので、窒素と加里を後から追肥で入れる時に適している複合肥料です。
トマトの場合はリン酸も追肥で与えるのですが、量が多くないので、リン酸については前回使った、単肥の過リン酸石灰で補いましょう。
それでは窒素の追肥の量について計算します。
3段目の時に1.8÷0.16=11.25
5段目の時に12÷0.16=75
9段目の時に0.6÷0.16=3.75
3段目開花時に11.25㎏、5段目開花時に75㎏、9段目開花時に3.75㎏となります。
窒素成分で1a当たり1回1㎏を限度として考えるので、10a当たり10㎏まで。
1回目、2回目の追肥をする場合は1週間ほどの間隔を空けながら1回目は2回に分けて、2回目は6回以上に分けて与えて下さい。
リン酸肥料の施肥計算をしてみよう
そういえばリン酸は基肥で全量施肥するんだったよね。
よく覚えているね。
リン酸は土壌で流失しにくいから、基肥で全量施肥するのが基本。
だけど、トマトは長い間、果実を収穫する野菜だから、花を作る段階の時を見計らって、追肥でも与えるようにするんだ。
でも、前述したように、土壌で流出しにくいから窒素やカリウムより基肥で与える量は多めになっているね。
リン酸は全量を基肥で施すことが基本です。
しかし、トマトなどの果実を長く収穫する作物の場合は追肥でも与えることがあります。
リン酸の総施肥量は10a当たり29.7㎏です。
前回は単肥で過リン酸石灰を使ったのでこのまま計算しましたが、今回は複合肥料です。
窒素成分で35㎏の量を撒くことが決定しているので、35㎏中にリン酸がどれだけ入っているかを計算しましょう。
35㎏中にリン酸も8%なので、
35×0.08=2.8
35㎏の複合肥料中にリン酸の成分量は2.8㎏あります。
リン酸の成分量は基肥で18.9㎏なので、そこから、2.8㎏分引きます。
18.9-2.8=16.1
前述した油かすにはリン酸が1%含まれているので、100÷0.01=1。
ということで、こちらもリン酸の基肥の分から成分量を1㎏引いておきます。
16.1-1=15.1
残りのリン酸の成分量で必要な量は15.1㎏です。
この少ない分はリン酸肥料として過リン酸石灰を使うことにします。
過リン酸石灰のリン酸量は20%。
計算すると15.1÷0.20=75.5。
なので、複合肥料の35㎏とは別に、75.5㎏の過リン酸石灰が必要となります。
追肥で使っているNK化成2号はリン酸が入っていないので、追肥にも過リン酸石灰を使います。
リン酸成分量で、3段目の時に2.4㎏、5段目の時に6㎏、9段目の時に2.4㎏追肥します。
計算すると、3段目の時に2.4÷0.20=12
5段目の時に6÷0.20=30
9段目の時に2.4÷0.20=12。
なので、12㎏、30㎏、12㎏と開花を目安に施します。
カリ肥料の施肥計算をしてみよう
次は加里の計算だね。
加里も複合肥料に8%入っているからまず、その分を計算して見よう。
まずは窒素の為に撒く35㎏分の方から加里がどれだけ入っているか計算するんだね。
加里も窒素と同じように、一度に施すことが出来ないので、施せない分は追肥で補うことにします。
では、加里の基肥の計算をしましょう。
まず、撒くことが決まっている35㎏分の肥料に複合肥料由来の加里(8%)がどれだけ入っているかを計算します。
35×0.08=2.8
よって加里の成分量で2.8㎏入っていることになりますね。
油かすにも加里が1%入っています。
施した量が100㎏なので、1㎏分の加里も元肥から引いておきましょう。
カリウムの総量は23.2㎏、基肥の基準成分量は8.8㎏。
基肥の8.8㎏から2.8㎏と油かすに入っている1㎏を引いて、5㎏。
残り5㎏分は単肥の硫酸カリ(50%)で補います。
硫酸カリの必要量は5÷0.50=10。
基肥には複合肥料と別に硫酸カリを10㎏必要となりますね。
追肥は3段目開花の時にカリ分が2.4㎏、5段開花の時に9.6㎏、9段目開花の時に2.4㎏必要となります。
窒素の追肥で化成肥料NKマグを
3段目の時に11.25㎏、
5段目の時に75㎏、
9段目の時に3.75㎏施します。
この時に加里がどれだけ含まれているか計算します。
加里は12%入っているので計算すると、
11.25×0.12=1.35
75×0.12=9
3.75×0.12=0.45
です。
この時に、3段目の時は2.4-1.35=1.05不足、5段目の時は0.6、9段目の時は1.95不足という結果になりました。
不足している分は単肥の硫酸加里で補います。
1.05÷0.5=2.1
0.6÷0.5=1.2
1.95÷0.5=3.9
開花目安に合わせて3段目開花時には硫酸加里を2.1㎏、5段目開花時は1.2㎏、9段目開花時は3.9㎏を追肥します。
肥料の施肥設計を都道府県施肥基準を活用して計画してみた結果
都道府県施肥基準を使って岐阜県飛騨地方、トマトの雨よけ栽培で使う複合肥料を使った化成肥料の量を計算することが出来たね。
複合肥料を上手く使うと、一度に肥料を施すことが出来るし、追加で施す単肥の量も少なくて済むね。
それでは、今まで計算して見た施肥設計をまとめて見ましょう。
㎏/10a | 888 | 油かす | NKマグ | 過石 | 硫加 |
基肥 | 35 | 100 | 75.5 | 10 | |
追肥1 3段開花 | 11.25 | 12 | 2.1 | ||
追肥2 5段開花 | 75 | 30 | 1.2 | ||
追肥3 9段開花 | 3.75 | 12 | 3.9 |
今回のまとめ
複合肥料を使って施肥設計すると労働力が削減できる
複合肥料には窒素、リン酸、加里が初めから一緒に入っている。
複合肥料を使った施肥設計を実際にしてみよう!
自分の地域に合った施肥設計を確認して見よう
農林水産省の都道府県施肥基準等で自分の畑のある地域の施肥基準を確認できる。
都道府県施肥基準等:農林水産省 (maff.go.jp)
育てる野菜を選ぼう
今回はトマトを選択。
作型を選ぼう
飛騨地方の雨よけ栽培を選択。
施肥基準を参考に複合肥料の施肥量を計算しよう
窒素肥料の施肥計算をしてみよう
基肥の計算
化学肥料分
・化成肥料888を使う。
・複合肥料888の窒素成分量は8%。
・窒素成分量の必要量は総量で17.2㎏、基肥で2.8㎏。
・必要な窒素の成分量2.8㎏を複合肥料の8%の窒素成分量で割る。
・2.8÷0.08=35
・基肥の窒素量2.8㎏を10aの面積に施す場合は硫安で35㎏必要となる。
有機肥料分
・有機物肥料由来の窒素成分6㎏を計算
・窒素成分由来の有機物肥料として、油カスを使う。
・油かすの窒素成分量は6%。
・6÷0.06=100
・油かす100㎏を10a当たりの畑に入れることで、窒素成分量6㎏を有機物肥料として施す。
追肥
・トマトの場合は3段目の花、5段目の花、9段目の花が咲く頃を基準に追肥をする。
・3段目の花で窒素成分量で1.8㎏、5段目は12㎏、9段目は0.6㎏を目安に与える。
・追肥の肥料は化成肥料NKマグを使う。
・化成肥料NKマグは窒素16%、リン酸0%、カリウムが12%。
・3段目の時に1.8÷0.16=11.25
・5段目の時に12÷0.16=75
・9段目の時に0.6÷0.16=3.75
・3段目開花時に11.25㎏、5段目開花時に75㎏、9段目開花時に3.75㎏。
・窒素成分で1a当たり1回1㎏を限度として考えるので、10a当たり10㎏まで。
・1回目、2回目の追肥をする場合は1週間ほどの間隔を空けながら1回目は2回に分けて、2回目は6回以上に分けて与える。い。
リン酸肥料の施肥計算をしてみよう
基肥
・リン酸は全量を基肥で施すことが基本。
・リン酸の総施肥量は10a当たり29.7㎏。
・窒素成分で35㎏の量を撒くことが決定しているので、35㎏中にリン酸がどれだけ入っているかを計算。
・計算方法は窒素肥料と同じ。35㎏の複合肥料中にリン酸の成分量は2.8㎏。
・リン酸の成分量は基肥で18.9㎏なので、そこから、2.8㎏分引く。
・油かすにはリン酸が1%含まれているので、リン酸の基肥の分から成分量を引いておく。
・残りのリン酸の成分量で必要な量は15.1㎏。
・足りない分はリン酸肥料として過リン酸石灰を使う。
・過リン酸石灰のリン酸量は20%。計算すると15.1÷0.20=75.5。
・複合肥料の35㎏とは別に、75.5㎏の過リン酸石灰が必要。
追肥
・NK化成2号はリン酸が入っていないので、追肥にも過リン酸石灰を使う。
・リン酸成分量で、3段目の時に2.4㎏、5段目の時に6㎏、9段目の時に2.4㎏追肥する。
・3段目の時に2.4÷0.20=12
・5段目の時に6÷0.20=30
・9段目の時に2.4÷0.20=12。
・よって、12㎏、30㎏、12㎏と開花を目安に施す。
カリ肥料の施肥計算をしてみよう
基肥
・撒くことが決まっている35㎏分の肥料に複合肥料由来の加里(8%)がどれだけ入っているかを計算。
・35×0.08=2.8
・加里の成分量で2.8㎏入っている。
・油かすにも加里が1%入っていて、施した量が100㎏、1㎏分の加里も元肥から引いておく。
・カリウムの総量は23.2㎏、基肥の基準成分量は8.8㎏。
・基肥の8.8㎏から2.8㎏と油かすに入っている1㎏を引いて、5㎏。
・残り5㎏分は単肥の硫酸カリ(50%)で補う。
・硫酸カリの必要量は5÷0.50=10。
・基肥には複合肥料と別に硫酸カリが10㎏必要。
追肥
・追肥は3段目開花の時にカリ分が2.4㎏、5段開花の時に9.6㎏、9段目開花の時に2.4㎏必要。
・窒素の追肥に化成肥料NKマグを3段目の時に11.25㎏、5段目の時に75㎏、9段目の時に3.75㎏施すので、その中に加里がどれだけ入っているか計算する。
・加里は12%なので、
・11.25×0.12=1.35
・75×0.12=9
・3.75×0.12=0.45
・3段目の時は2.4-1.35=1.05不足、5段目の時は0.6、9段目の時は1.95不足という結果に。
・不足している分は単肥の硫酸加里で補う。
・1.05÷0.5=2.1
・0.6÷0.5=1.2
・1.95÷0.5=3.9
・開花目安に合わせて3段目開花時には硫酸加里を2.1㎏、5段目開花時は1.2㎏、9段目開花時は3.9㎏を追肥する。
㎏/10a | 888 | 油かす | NKマグ | 過石 | 硫加 |
基肥 | 35 | 100 | 75.5 | 10 | |
追肥1 3段開花 | 11.25 | 12 | 2.1 | ||
追肥2 5段開花 | 75 | 30 | 1.2 | ||
追肥3 9段開花 | 3.75 | 12 | 3.9 |
今回は複合肥料を使って施肥設計をしてみたよ。
注意点として、あくまでも基準だから、自分の畑の土壌診断の状況を見て判断したり、不安な場合は各地域の普及員さんに相談して見ようね。
どれくらいの量の肥料が必要か事前に確認することが出来るねのはとても大事なことだね。
そうだね。
今回は複合肥料の値は8%で計算したけど、まだ高い値で入っている物もあるから、自分の育てたい野菜で効率よく肥料が使えるように計算しておくと便利だね。
そうか、今回のトマトだと窒素や加里がもっと入っている複合肥料だと便利だよね。
お金をかけないようにする施肥設計や、撒く回数を減らす施肥設計など、自分のスタイルに合わせた肥料の計算が出来るといいね。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
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大判 図解家庭園芸
用土と肥料の選び方・使い方
著者 加藤 哲郎
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