こんにちは、とまきちです٩( ‘ω’ )و
前回まで、おひとりさまの「身元保証契約」と「死後事務委任契約」について書いてきました。
今回は3つ目の契約、「遺言書」の話です。
ふと、こんなことを考えたことはありませんか。
「もし自分が亡くなったら、家や貯金、保険金は、誰が受け取るんだろう」
家、貯金、年金、保険、長年集めてきた本やコレクション、思い出の品。
これらが、自分が亡くなった後にどうなるのか。
家族がいる人なら、その家族が受け取ります。
でも、おひとりさまの場合、誰が?
「相続人がいないから、自動的に国に取られる」と聞いたことがあるかもしれません。
本当にそうでしょうか。
逆に、思いがけない人に財産が行ってしまうこともあるのでしょうか。
不安な気持ちを抱えたままにしておきたくなかったので、FP2級として、また当事者として真剣に調べてみました。
この記事は、その答えをまとめたものです。
今回のテーマは、FP(ファイナンシャルプランナー)の試験科目でいうと「相続・事業承継」の分野にあたりますね。

📝 この記事について
本記事は、FP2級の視点から、おひとりさまの相続に関する一般的な情報をまとめたものです。執筆時点(2026年5月)の法律・制度に基づいていますが、法律は改正される可能性があります。また、個別の相続事情には記事の内容が必ずしも当てはまらない場合があります。実際に遺言書を作成される際や、相続に関する具体的な判断をされる際は、最新情報をご自身で確認のうえ、必要に応じて司法書士・弁護士などの専門家にご相談ください。本記事の情報を利用したことによる損害について、当ブログは一切の責任を負いかねます。
遺言書がないと、財産はどこへ行くのか
まず、遺言書がない場合に何が起きるかを整理します。
日本の法律では、亡くなった人の財産は「法定相続人」に引き継がれることが決まっています。
法定相続人とは、法律で「この人が相続人になる」と定められた人のことです。
法定相続人になる順番は、次のとおりです。
配偶者は常に相続人になります。
それに加えて、①②③の順番で、上位がいなければ次の順位の人が相続人になる仕組みです。
おひとりさまの場合を考えてみます。
配偶者も子もいない場合、父母が相続人になります。
父母も亡くなっていれば、兄弟姉妹に行きます。
兄弟姉妹も亡くなっていれば、甥姪(兄弟姉妹の子)に行きます。
これを「代襲相続」と言います。
ここで疑問が湧きます。
もし、これらの法定相続人が誰もいなければ、どうなるのか。
答えは、「最終的に国庫に帰属する」です。
つまり、誰も相続する人がいなければ、財産は国の所有になります。
れは、おひとりさまにとって、知っておくべき大事な事実です。
ただし、いきなり国の所有になるわけではありません。
家庭裁判所が「相続財産清算人(以前は相続財産管理人)」を選任して、債権者への支払いや、後述する「特別縁故者」への分配などの手続きを経たうえで、残った財産が国庫に入る、という流れです。
おひとりさまにとっての、遺言書を書く意味
ここからが、おひとりさまにとっての本題です。
なぜ遺言書を書く必要があるのか。
理由は3つあります。
ひとつめ
法定相続のままだと、自分の意思とは違う相手に財産が行くことがあります。
例えば、長年疎遠だった甥姪に全財産が行く、というケースです。
自分は別の人(お世話になった友人、応援したい団体など)に遺したいのに、法律上はそれができません。
ふたつめ
相続人がまったくいない場合、財産は国に行ってしまいます。
「自分の財産を、お世話になった人や、応援したい団体に遺したい」と思っても、遺言書がなければそれは叶いません。
みっつめ
「特別縁故者」という制度があるが、相手の負担が大きい。
法定相続人がいない場合、生前にお世話になった人(同居していた人、介護してくれた人など)が「特別縁故者」として、家庭裁判所に申し立てて財産を受け取れる制度があります。
ただし、これは申し立てた本人が手続きをしなければならず、認められるかも家庭裁判所の判断次第。
遺言書があれば、こうした不確実性なく、確実に財産を渡せます。
つまり、おひとりさまにとって遺言書は、「自分の財産の行き先を、自分で決めるための唯一の手段」です。
ちなみに、遺言書で財産を渡すことを「遺贈(いぞう)」と言います。
法定相続人ではない人や団体に財産を渡す場合、この遺贈という形になります。
寄付したい団体がある方、お世話になった友人に遺したい方は、遺贈という制度を知っておくと選択肢が広がります。

遺言書の3つの種類
遺言書には、法律で認められた3つの種類があります。
それぞれ作り方も特徴も違うので、整理して見ていきましょう。
費用:ほぼ無料(法務局保管制度を使う場合、保管料3,900円)
メリット:費用が安い、いつでも書ける
デメリット:要件を満たさないと無効、紛失・改ざんのリスク
費用:財産額により数万円〜十数万円
メリット:無効になるリスクがない、公証役場で原本保管、紛失の心配なし
デメリット:費用がかかる、証人2名が必要
費用:公証役場の手数料11,000円
メリット:内容を秘密にできる、自分で書ける
デメリット:要件不備のリスクあり、現在ではほとんど使われない
それぞれ補足します。
自筆証書遺言は、最も手軽な方法です。
紙とペンと印鑑があれば作れます。
ただし、「自分で全文を手書きする(財産目録部分はパソコンOK)」「日付を正確に書く」「氏名と押印が必須」など、細かい要件があります。
一つでも欠けると無効になります。
2020年から、自筆証書遺言を「法務局で保管してもらえる制度」が始まりました。
これを使うと、紛失や改ざんのリスクがなくなり、相続発生時の「検認手続き」も省略できます。
自筆証書遺言を作るなら、この保管制度を使うのが安心です。
公正証書遺言は、公証役場で作る方法です。
公証人(法律の専門家)が内容を確認しながら作るので、要件不備で無効になることがありません。
公証役場で原本が保管されるため、紛失の心配もなく、相続発生時に検認手続きも不要です。
費用はかかりますが、確実性は最も高い方法です。
秘密証書遺言は、現在ではほとんど使われていません。
内容を秘密にしたい場合の選択肢ですが、要件不備のリスクがあり、自筆証書遺言の法務局保管制度ができてからは、使う意味が薄れています。
おひとりさまにおすすめの遺言書はどれか
結論から言います。
おひとりさまには、「公正証書遺言」を強くおすすめします。
理由を3つお伝えします。
ひとつめ
無効になるリスクがありません。
公証人が要件を確認しながら作るので、間違いがありません。
せっかく書いた遺言が無効になり、自分の意思が反映されない、という事故を防げます。
ふたつめ
紛失の心配がありません。
原本が公証役場で半永久的に保管されます。
自宅で保管していて火災や災害で失われる、というリスクがありません。
みっつめ
相続手続きがスムーズです。
公正証書遺言なら、家庭裁判所の検認手続きが不要です。
死後事務委任契約の受任者や遺言執行者が、すぐに手続きを進められます。
費用は数万円〜十数万円(財産額による)ですが、これは「確実に自分の意思を遺すための保険料」と考えれば、決して高くありません。
ただし、「公正証書遺言は費用が高すぎる」「まずは自分で書いてみたい」という方もいると思います。
その場合は、「自筆証書遺言+法務局保管制度」を使うのが現実的な選択肢です。
費用は保管料3,900円(2026年5月時点)だけで済み、紛失リスクもなく、検認手続きも不要になります。
つまり、おひとりさまの遺言書の選び方は、こうなります。
財産が多い、確実性を最優先する、複雑な分配をしたい → 公正証書遺言。
財産がシンプル、まずは安く始めたい → 自筆証書遺言+法務局保管制度。

遺言書を書く時に気をつけたい5つのこと
実際に遺言書を書くにあたって、FPとして特に大事な5つのポイントをお伝えします。
ひとつめ
財産のリストを正確に作る。
現金、預貯金(銀行名・支店・口座番号)、不動産(登記簿の情報を見ながら正確に)、有価証券、保険、車、貴金属、デジタル資産(暗号資産、ネット銀行など)まで、漏れなくリストアップします。
財産の見落としがあると、その部分は法定相続のルールで処理されます。
ふたつめ
受取人を明確に書く。
「友人の田中さん」だけでは特定できないので、氏名・住所・生年月日など、本人を確実に特定できる情報を書きます。
寄付したい団体の場合は、正式名称と所在地を正確に。
みっつめ
遺言執行者を指定する。
遺言の内容を実現してくれる人を指定します。
信頼できる友人でも、司法書士・弁護士などの専門家でも可能です。
死後事務委任契約の受任者と同じ人にすると、一連の手続きがスムーズに進みます。
よっつめ
法定相続人がいる場合は「遺留分」に注意。
配偶者・子・父母には「遺留分」という最低限の取り分が法律で保証されています。
これを無視した遺言は、後でトラブルの原因になります。
兄弟姉妹には遺留分がないので、おひとりさまで兄弟姉妹だけが法定相続人の場合は、自由に遺贈先を決められます。
いつつめ
定期的に見直す。
財産が増減したり、受取人候補との関係が変わったりした時に、遺言書を書き直します。
公正証書遺言は書き直しも可能ですし、自筆証書遺言は新しい日付で書き直せば、新しいものが有効になります。
5年に一度は見直す、というルールを自分で決めておくと安心です。
3つの契約を整える、その先へ
ここまで、シリーズで3つの契約を見てきました。
②死後事務委任契約:亡くなった後の事務手続き
③遺言書:財産の相続先の指定 ←今回
3つを揃えて、初めておひとりさまの「生前から死後まで」の準備が整います。
最初は「3つも契約するの?」と感じるかもしれませんが、ひとつずつ、ゆっくり整えていけば大丈夫です。
そして、3つの契約を整えると、次は「日々の不安」への備えに目が向きます。
例えば、「家で倒れた時に誰が気づいてくれるのか」「孤独死を防ぐにはどうしたらいいか」という疑問です。
次回の記事では、おひとりさまの「見守りサービス」について書きます。
日々の安心を、どう作るか。
一緒に考えていきましょう。
今日から始められる、お金の準備
最後に、お金の話です。
シリーズで紹介してきた身元保証、死後事務委任、遺言書。
これらすべてに費用がかかります。
トータルで、数百万円規模の準備が必要なこともあります。
でも、これも一度に必要なお金ではありません。
これから10年、20年、30年かけて、コツコツ準備していけば、十分に間に合います。
大事なのは、自分の場合いくら必要なのか、月にいくら積み立てればいいのか、を「数字で把握すること」です。

写真4:希望や安心、人生の整理をイメージさせる写真。若葉、開いた手のひら、植物の芽など、1〜2本目と統一感のあるイメージ
まとめ 自分の財産の行き先は、自分で決められる
長い記事になりましたが、最後にお伝えしたいことは、シンプルです。
おひとりさまの財産は、遺言書がなければ、法定相続人(配偶者・子・父母・兄弟姉妹・甥姪)に行きます。
誰もいなければ、最終的に国の所有になります。
でも、「遺言書があれば、自分の財産の行き先を自分で決められます」。
お世話になった友人、応援したい団体、好きなところへ。
これは、おひとりさまだからこそ大切にしたい、自分の意思の表明です。
遺言書の作り方は、自筆証書遺言と公正証書遺言、どちらも選べます。
確実性を求めるなら公正証書遺言、コストを抑えるなら自筆証書遺言+法務局保管制度。
自分の状況に合わせて選んでください。
身元保証(1本目)、死後事務委任(2本目)、遺言書(今回)。
この3つの契約を揃えれば、おひとりさまの「生前から死後まで」の準備は、ひとまず完成です。
ふと「自分の財産はどうなるんだろう」と不安に感じた時、この記事を思い出してください。
遺言書を書けば、ちゃんと意思を遺せます。
「自分の人生の終わり方を、自分で決められる」、これがFP2級でおひとりさまの私からの、当事者としての答えです。
次回は、おひとりさまの「見守りサービス」について書きます。
孤独死を防ぐにはどうしたらいいのか、日々の見守りはどんな選択肢があるのか。
当事者目線で解説します。
一緒に、ゆっくり準備していきましょう٩( ‘ω’ )و
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